65歳から始める英語学習にはさまざまなメリットがあります。
脳の活性化により認知機能が向上するだけでなく、自己効力感の向上や豊かな人間関係の構築など、人生を豊かにする様々なメリットが期待できます。
脳の活性化と認知機能の向上
言語学習が脳にもたらすメリット
若くないと意味がないと思われがちな英語学習。しかし、実は「高齢者」とよばれる65歳以上でも、英語学習を始めることには大きな意味があります。
外国語学習によって脳は柔軟に変化する
「脳の可塑性」という言葉を聞いたことがありますか?
脳を構成する神経とそのネットワークが、外界からの刺激などによって変化する性質のことです。
昔は「脳は大人になると固定されてしまい、それ以上変化しない」と信じられてきましたが、最近では、脳は受けた刺激に対して変化し続ける性質があることが明らかになっています。
ある研究結果では、日本人被験者に英語学習を4か月間行ってもらったところ、前頭葉の灰白質※容積や、脳局所間の連結強度が有意に増加していました。
※情報を処理する脳の部分、神経細胞の細胞体が密集する部分
これは「外国語学習により脳が刺激され発達した」ことを意味します。脳は外国語学習により活性化し、柔軟に変化・成長するのです。
バイリンガルは認知症になるのが遅い
ある研究によると、母国語以外の言語を話せる人は、そうでない人に比べ 、認知症の発症が4 ~ 5 年遅く、脳卒中からの回復も早い傾向があることがわかっています。
これは、外国語を使用することにより、脳の病気や加齢に対抗して正常な認知機能を維持しようとする力(=認知予備能)が高まるからだと考えられています。
2つ以上の言語を使うことは想像以上に複雑で高度な脳の働きを要するもの。複雑な認知活動を日頃から行うことによって、脳が鍛えられ、認知予備能が高まり、病気や加齢の影響を受けにくくなるのです。
一生涯で認知症になる確率は50%といわれ、誰しもが認知症になることが考えられる現代。早くからリスクを減らすための健康活動として、外国語学習が注目されています。
外国語学習で何歳からでも脳トレ効果
このような外国語学習の効果に着目して、高齢者向けに外国語のレッスンを行う企業も出てきています。
「高齢者になってからの勉強では遅いのでは?」と思われる方もいるかもしれませんが、これまでの取り組みでは、高齢者やすでに認知症になってしまった人でも、マルチタスク力、意思決定力、集中力、コミュニケーション力など、様々な能力に改善が見られたと報告されています。
なんと、言葉を発せなくなっていた重症の認知症患者が再び言葉を発するようになった例も。
外国語学習の脳へのポジティブな効果は何歳からでも享受できることがわかります。
継続的学習で認知機能を向上
脳を鍛えるには継続が必要
前項では、脳には外界からの刺激に応じて変化・発達する「可塑性」があることをお伝えしました。
しかし、「可塑性」があるということは、逆方向に変化すること、つまり元に戻ってしまう可能性もあるということを意味します。
実際、日本人被験者に英語学習を行ってもらった先の研究では、英語学習をやめて1年後には脳は元に戻ってしまったそうです。
脳は使えば発達しますが、使わなければ衰えてしまうということです。
英語学習は誰にとっても継続しやすい理由
「継続しなければならない」といわれると難しそうに聞こえるかもしれません。
しかし、実は英語学習は、場所を選ばずスキマ時間で行える、誰でも続けやすい趣味です。
勉強方法も様々なので、自分の興味に合ったものを選べますし、自分のレベルに合わせて進められます。
家で勉強していて「飽きたな」と思えば、教室に行ってもよいですし、コミュニティに参加して情報交換してみるなど、いろいろな方法があります。
「昔英語の勉強を継続できなくて挫折した」という方は、厳しすぎる目標を設定したり、自分に合わない学習法を選んでいたりして、学習の過程を十分に楽しめなかったのではないでしょうか。
英語学習はもっと自由なものです。肩の力を抜き、自分が楽しい、面白いと思える学び方を選びましょう。
「楽しい」「もっと知りたい」という気持ちが何よりも脳を活性化させます。
自己成長と自信の向上
会社を定年退職する年齢は、長い第二の人生の出発点。
残りの時間を豊かなものにできるかどうかは、これからの過ごし方で決まります。
日々の生きがいを見つける
仕事をしたり、趣味を楽しむなど、自己成長を続けている人のほうが、いつまでも元気で生き生きとしているものです。
これからの新しい趣味や生きがいとして、英語学習を始めるのはいかがでしょうか。
60代が経験する悩み・喪失感
60代の方からよく聞くのが「これといった趣味も特技もなく、時間を持て余してしまう。自分のやりたいことが見つからない…。」という声です。
60代は、生活スタイルや人間関係などが大きく変化する年代。
子育てや仕事など、今まで当たり前だったことが目の前からなくなり、肩の力が抜けると同時に、喪失感を抱えている方も多いのではないでしょうか。
また、役割の喪失や、身体機能の衰えにより、いろんな面で自信が低下してしまう方が多い年代でもあります。
英語学習に打ち込んでみる
環境の変化や身体の衰えなどに負けず、第二の人生を生き生きと過ごすためには、何か打ち込めるものを見つけましょう。
人間、暇な時間がありすぎると「自分の生き方はこれで大丈夫なのか」など、余計なことを心配してしまいがち。ろくなことがありません。
ゆっくりと続けられる範囲でいいので、趣味や習い事などを行うのがおすすめです。
第二の人生で新しく始める趣味として、英語学習はとてもおすすめです。
体力が必要なスポーツと違っていつまでも続けられますし、「お気に入りの小説を英語で読んでみる」「アウトドアが趣味なので海外のアウトドア系YouTubeの動画を見てみる」というように、興味のあることやすでに持っている趣味と組み合わせて楽しむこともできます。
英語学習で自己効力感を高める
「自己効力感」を高め、無気力に陥るのを防ぐ
「自己効力感」とは、自分の可能性を信じ「自分ならできる」と思える状態のことです。
年を取ると、今までできたことができなくなったり、衰えてくる心身に不安を感じてしまい、自己効力感が低くなる傾向があります。
自己効力感が低いと、「どうせ上手くできないから」と、行動したりチャレンジしたりするのをやめてしまい、無気力になってしまいがち。
自己成長を続け、第二の人生を豊かで実りあるものにしたいなら、自己効力感を高めましょう。
最近の研究では、自己効力感の向上が不安感や孤独感の改善にもつながることがわかっており、人生の満足度を高めるために重要な要素だと考えられています。
英語学習は自己効力感を高めやすい
英語学習は自己効力感を高めるために非常に有効です。
英語学習には特別な才能や体力は必要なく、学習すればするほど身につきますし、自分の成長を目に見える形にしやすいからです。
「以前は全く意味のわからなかった文が少し読めるようになってきた」
「言いたいことが伝わった」
など、「努力したらできるようになった」という経験の積み重ねが自己効力感を高めます。
自分に対する自信が高まり、「次に海外旅行に行ったときは、地元の人に話しかけてみよう」など、新しいことにチャレンジする意欲がアップ。
行動も活発になり、第二の人生を生き生きと過ごすことができます。
国際的な視野を拡大し第二の人生を若々しく生きる
グローバル化が進み、世界が速いスピードで変化する現代では、何歳になっても外の世界に目を向け、アンテナを張っておくことが重要です。
異文化に触れることで柔軟な思考を養えるだけでなく、好奇心を刺激して若々しさを保つことができます。
外国のニュースや文化に触れる機会の増加
好奇心を刺激し、いつまでも若々しく
英語学習をすると、英語を通して海外の文化や考え方に触れることになります。
日本で当たり前なことがある国では当たり前ではなく、「どうして?」と驚いたり、「そういう考え方もあるのか」と感心したり、知的好奇心が刺激されます。
「もっと知りたい」と思えば、何かを調べたり、実際に足を運んでみたりと積極的に活動するようになるでしょう。
年を取っても元気な人は、「あれがしたい」「あそこに行ってみたい」と、総じて好奇心が旺盛。
英語学習を通して新しい価値観や知識に触れつづけれることで、毎日を若々しく過ごすことができます。
異文化や海外のニュースに触れ、自分をアップデート
年を重ねるにつれ、人は知らず知らずのうちに保守的になってしまい、視野が狭くなりがち。
一昔前まではそれでも良かったかもしれませんが、世界がめまぐるしい速度で変わりゆく現代では、年を取っても自分をアップデートし続ける必要があります。
英語を通して海外のニュースや情報を仕入れ、常に外にも意識を向けるようにしましょう。
文化の多様性を認識し、国際的な視野を拡大することで、自分自身が日々アップデートされていき、思考が偏らないようになります。
英語学習を通じて豊かな人間関係を手に入れる
人間関係は人の幸福度に大きく影響します。英語学習を通じ、豊かな人間関係を築いてみませんか。
いい人間関係が幸福度と健康の秘訣
年を取ると狭くなりがちな交流範囲。内閣府が行ったある調査では、「60歳以上の4人に1人は、友人が1人もいない」という結果だったそうです。
特に仕事一筋に生きてきた人ほど、その傾向があるかもしれません。
しかし、人間関係を疎かにすることはあなたの人生にマイナスの影響をもたらします。
ハーバード大学が行った、幸福度とその要因に関する研究では、「人の幸福度と健康を高めてくれるのは、いい人間関係である」ことが明らかになりました。また、この研究では、「年収や学歴、職業は幸福度に直接的に影響しない」こともわかりました。
人間関係というのは、幸福度に対して何よりも大きな影響を与えるのです。
幸せで健康な第二の人生を過ごしたいなら、人との関わりを意識する必要があることがわかります。
英語学習を通して豊かな人間関係を築く
大人になると新しい友達はなかなか作りづらいもの。
しかし、英語学習のように共通の趣味があれば、ハードルは下がります。
英語学習サークルに入ったり、カルチャーセンターの英語講座に行ってみるのもよいでしょう。英語学習の仲間ができれば、時には助け合い、時には刺激を与え合いながら、交流を深めていくことができます。
また、国際交流イベントや言語交換イベントなどを利用するのもおすすめです。自分の成長が確認できますし、様々な国の人と関わることができ、良い刺激になります。
さらに、外国人の友達ができれば、「この人ともっといろんなことが喋れるようになりたい」という思いで、学習のモチベーションが高まりますし、そのような目標があることで普段の生活にもハリが生まれます。
おすすめの言語交換イベント「Ohanasi Kagawa」
65歳以上にもおすすめの言語交換イベント「Ohanasi Kagawa」を紹介します。
言語交換とは、言語を学びたい人どうしが「お互いの話せる言語」を教えあうこと。
「Ohanasi Kagawa」には、世界各地から日本の文化や言語に興味のある外国の方が多数参加されていて、英語と日本語を使って交流することができます。
「そういうイベントって若い人ばかりじゃないの?」と思われる方もいるかもしれませんが、「Ohanasi Kagawa」は10、20代の参加者は少なく、年齢層が高め。60代、70代の方も参加されており、落ち着いた雰囲気で会話を楽しめます。
基本的に交流は1対1※で、日本語と英語で話す時間が15分ずつ設けられているため、お互いの言語を教え合いながら会話を楽しむことができます。
1対1のコミュニケーションであれば、英語力やコミュニケーション力に自信がなく、普通の国際交流イベントでは会話の輪の中に飛び込めない人でも大丈夫。
また、セッションは日本語の会話から始まるため、最初に日本語でお互いのことを知ることができ、英語を話し始める心理的ハードルもグッと下がります。
日本で長年暮らしてきたあなたの経験や考え方は、日本に関心を持っている外国の方にとっては非常に興味深いもの。お互いの文化や言語について教え合い、学び合う経験をしてみませんか。
イベントは毎週土日に行っています。興味がある方はぜひ参加してみてください。
Ohanasi Kagawaについてもっと知る
※参加人数の都合上3人ペアになることもあります
まとめ
65歳から始める英語学習は脳を活性化して認知力の衰えを防ぐだけでなく、視野を広げ、精神的にも若々しくいられるなど、多くのメリットがあります。
ぜひ本記事を参考にして英語学習を始め、その効果を実感してみてください。
参考記事:
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20130821/index.html
https://www.lingoflamingo.co.uk/why-language-learning
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ana.24158
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=53628?site=nli
https://president.jp/articles/-/45510?page=1